第10回大阪ショー 石ふしぎ大発見展 (2004.5.2)


  
益富地学会館も出店
益富地学会館も出店
  
石のはんこを作ろう
石のはんこを作ろう

 


  
  

 


特別展示 京都大学総合博物館秘蔵鉱物標本  京大が守り伝えた明治・大正時代の日本産鉱物標本

  
輝安鉱 水晶
輝安鉱
水晶
  
黄銅鉱 重晶石
黄銅鉱
重晶石
  
水晶
水晶

 


鉱物観察同定の次の段階         加藤昭(国立科学博物館名誉研究員)

はじめに
 あなたが幾つかの鉱物の名前を自分で決められるようになるためには,その前にそれらの名前や性質に関する情報をもつ必要があります。その情報の取り入れ方には,少なくとも三つの行き方があります。一つは標本を観察することです。もう一つは人から教わることです。三つ目は,鉱物のことを書いてある本や記事を見ることです。夫々の生き方にどういう特徴があるかは,少し考えればすぐに分かりますが,最近はインターネットなどを用いて,容易に高度の情報が多量に手に入りますので,三つ目の部分がより身近なものになりました。しかし,このようにして得られた,いわば第三種の情報は,あくまでもその作者の持ち物ですから,それに浸っている間は,その作者は自然界の真の先生である鉱物に対して,あなたより先を歩いていることになります。勿論あなたが鉱物の勉強を始められたばかりの段階でしたら,その内容は有用なガイドブックになりますから,その活用を否定するものではありません。
 このような情報を身につけて鉱物を観察すると,大抵は鉱物名が分った時点で一段落となります。実はこれからは,自力で鉱物という先生に近づいていく道程になります。洒落ではありませんが,意識することが「同定」から「道程」に変わります。色々な鉱物を観察し,その結果をこれまで得られている情報と照らし合わせると,種類によっては,思いがけない発見と巡り会うことができます。もしこれによって,自分が鉱物の方へ向かう「道程」自体でも,あるはそれらしきものでも発見出来たら,それは大きな収穫です。内容はさておいて,発見に至る過程が大切な経験になるのです。その発見とはどういうものか,それはどういう影響をもたらすのか,そうするにはどうしたらよいか,ということについて,広く産する二・三の造岩鉱物を例にあげて説明します。
 もし貴方が次世代の方々に伝える情報が上の第三種情報に留まっていたら,そこに進歩がないままのものが伝わることになります。どんな形のものでも結構ですから,自力で鉱物という先生から何かを教わって,それを次世代の方々に伝えられるようにして下さい。第一種の情報内容の充実を図ることが出来るのは貴方御自身だけです。第二種のそれは,知り合った受信者発信者のどちらかが貴方です。ここでは意思の疎通があります。それも大切にして下さい。

結語
 さて,これまでお話して来たことは,序文に述べた内容に大体沿ったものであったと思っています。しかし,敢えて,これが発見ですよという形は取りませんでした。この話の中から発見というものを掘り出すとすると,勿論沢山あることでしょうが,その一例を挙げておきます。
 石灰岩起源のスカルン鉱物の生成の場合,珪灰石と灰鉄輝石の場合について説明しましたが,後者の場合,SiO2化合物とFe2+化合物とは,スカルン化の際の挙動が必ずしも一致するとは限りません。ですから,もし再結晶石灰岩のある所へこれらの物質が染み込んで来て,反応の中途でそれが停止したら,灰鉄輝石と方解石の境界はどうなっているかという疑問に行き当たれば,実はこれが発見への過程なのです。そしてその答に相当するものをある産地で確認できたら,それこそ真の発見となります。
 それがもたらす影響といえば,この場合はその関係が他の産地でも見られるだろうかということで,他の産地での活動目的の設定に役立つことです。そうしたら,スカルンの産地で灰鉄輝石の塊に出会ったら,その中に反応し残りの方解石はないかという目をもって探す,という順序になります。
 私が美束(岐阜)で観察した例では,灰鉄輝石と方解石の境界は非常に明瞭で,その境界に沿って,鉄バスタム石(Ferrobustamite,CaFe
2+[Si3O9]2)が幅数mmに亙って生成されていました。ですから,SiO2化合物とFe2+化合物がCa[CO3]へ染み込んでいった最前線では,SiO2化合物とFe2+化合物に対して,灰鉄輝石を構成するよりも高い比率を持っていたということが出来ます。
 このような思考が無ければ,この鉄バスタム石の標本は単なる一個の鉄バスタム石の標本に過ぎません。この影響というか効果として,今度は別の産地での鉄バスタム石探しの要領が判って来ます。勿論これは飽くまでも私の行き方です。皆さんは皆さんで,自分独自の見方を持たれるよう希望します。
 要は,自分の接した標本について,鉱物名や産地だけでなく,何かプラスアルファを見出すことです。どんな標本でも結構です。どんなことでも結構です。機会があったら試してみて下さい。もし収穫があったらそれを積み重ねてください。

(講演の際に配布された資料から無断転載しました)


「アラカルト」にもどる

ホームページにもどる



digidigi mini bannerdigidigi mini bannerdigidigi mini bannerdigidigi mini bannerdigidigi mini banner