桜石鬼伝説と行者山(2003.3.23)
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桜石!
春らしい暖かな日曜日。連休の最終日ということもあり,行楽地はたくさんの人でにぎわうことでしょう。そんなところへ行くのは,チョット勇気がいります。久しぶりに鉱物採集に出かけましょう。行き先は,亀岡市の湯の花温泉。ここでは,世界でも珍しいといわれる「桜石」が採取できます。桜石の標本は,今までに幾度となく目にはしたものの,それがどんな状態で採取できるのかといったことはまったく知りません。それが,今日,採取できるというのですから,逃すテはありません。
稗田野の桜石
世界でも珍しい桜石が亀岡市で採集できる。行者山を中心とする東西約3km,南北約5kmの花崗岩体が中生代末に地下へ貫入し,まわりにあった中生代初期の粘板岩に接触変成をあたえ,粘板岩ホルンフェルスができた。その中にみごとな菫青石仮晶=桜石が生まれた。大正11年(1922)国の天然記念物に指定されている。(『京都の地学図鑑』京都新聞社より)
湯の花温泉に集まった参加者約100名。まずは,益富地学会館の旗の先導のもと,採集地に向かいます。暖かい春の日がいっぱいにふりそそぎ,気持ちのいい陽気です。受け付けをすませ,焼却ゴミ最終処理場?の上の広場に向かいます。ここは宅地造成地だったそうですが,今は単なる荒地です。バブルがはじけ,開発が進まなかったのでしょう。採集場所(@)は,その空地の北東にある土ガケです。
創作民話 桜石鬼伝説 (厄災を祓い福鬼を呼ぶ神秘的な石と鬼の涙の物語)
昔むかし稗田野の山々を根城に,多くの鬼が住んでいた。
たまたま村を通りかかった高徳な行者が,ただならぬ妖気を感じ,これを祓うために,どこを切っても桜の花に似た模様が出てくる「桜石」と名づけられた神秘的な小石を妖気の方向に投げると,山が真二つに割れ,その深い穴に鬼が呑み込まれていった。
その後,山のふもとから,鬼の涙が温泉となって湧き出て,それに身を浸すと,あらゆる怪我や病がたちどころに快癒した。
この温泉こそが,湯の花温泉の元祖である。
土ガケに着くや否や,参加者はハンマーを持って,ガケを崩し始めています。益富地学会館の藤原さんから桜石についての何らかの説明があるのかと思っていましたが,それどころではないという雰囲気です。老いも若きも,男も女も,目指すは桜石!しかも,形のきれいなものです。
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ボクもチョット寄せてもらいましょう。土ガケに向かい,ハンマーで掘ると,きれいではありませんが桜石らしいものが見つかります。黒っぽい土,つまりこれが風化した粘板岩なのでしょう。その黒っぽい土の中に小さな桜石が点在しています。なるほど,こんなふうになっているのかぁ。
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桜石
正しくは菫青石仮晶という。菫青石の結晶は六角柱状の形であるが,実質は緑泥石や白雲母に変質している。結晶形はそのままで実質が変質しているので仮晶という。菫青石は粘板岩ホルンフェルス中に生じ,砂岩ホルンフェルス中にはできない。粘板岩に多い,Al,Mg成分を必要とするのである。(前掲書より)
同行のS田さんは,初めての鉱物採集です。きれいな桜石がゲットできるとあって,熱心に土ガケで採集しています。そのうちに,広場に落ちている桜石を拾い始めました。土ガケを崩すより,広場に落ちている桜石を見つけるほうが,手っ取り早いし,確実なようです。
参加者一同がとりつかれたように採集を始めて30分後。本日の最長桜石をゲットした人には,大水晶の景品がプレゼントされるという連絡がありました。この時点で,長さ2.3mmが最長です。景品までゲットできるとあっては,ハンマーを振る参加者の手にますます力が入ります。お昼になっても,ランチにする人はほとんどいません。でも,これはいつものこと。今日に限ったことではありません。せっかくのチャンスですから,メいっぱい採取したいからでしょう。
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満足できる桜石をゲットできたボクは,すでに次の目的地に心は向かっています。何事も始めだしたら病みつきになる性質のS田さんは,まだまだ探したい様子です。さっさと昼食をすませ,次なる目的地である行者山に向かいます。中腹の独鈷抛観音(P)に車をとめ,行者山の西尾根から登ります。その途中では,水晶や錫石,灰重石などが採取できるとか。つまり,山歩きと鉱物採集が一石二鳥で楽しめるというわけです。
地形図では破線の道ですが,現在は舗装されて車道になっています。まわりの岩をチェックしながら歩くものの,花崗岩の塊という感じです。神前峠(A)に到着。ここが行者山への登り口になっています。落ち葉の積もった山道です。まわりを見ても,鉱物なんて,採れそうにありません。やっぱり,小川に下りなきゃあダメなのかもしれません。あまり期待もせず,登ります。
山道に点在する岩を見ると,誰かがハンマーで割った形跡があります。われわれ同様に,石を探しに来たのかもしれません。さらに落ち葉の道は続き,行者山の北西のピーク(B)に到着。ここには道標があり,なぜか赤テープもあります。行者山はもう少しです。尾根を歩いていると,大きな岩がゴロゴロしていますが,どう見ても鉱物が採れそうにはありません。しかし,そんな岩をもたたいた形跡があります。やけになって手当たりしだいにたたいたのか,ハンマーを持ったのでついついたたいてしまったのか,それはわかりません。
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小さなピークを過ぎ,行者山山頂(C)へ。ここには三角点(二等三角点 点名行者山 431.0)があります。山名プレートもあります。神前峠から30分ほどです。木立に囲まれ,展望のないのが残念です。山頂直下の北斜面には,巨岩点在しています。巨岩につきものの,石像や祠もあります。ここでも巨岩信仰が健在です。どうしてこうも,日本人は大きなものへの信仰心が篤いのでしょうか。アニミズムは科学の発達した現代にも生き続けているようです。
下山は,同じルートをピストンです。下りは,MTBなら十分乗車可能です。こんな快適な下りを歩くなんて,チョットもったいない。結局,鉱物らしいものは見つかりませんでしたが,のんびりと山歩きを楽しめました。しかも,鉱物が採れるかもしれないという期待をもちながら。今日は,桜石を採取でき,山歩きも楽しめ,一粒で二度美味しい山行きになり,メデタシ,メデタシ。