山道にキラキラきらら 奈良・北椿尾(2001.7.15)
10年ぶりの北椿尾
久しぶりの鉱物採集です。昨秋の鞍馬・貴船以来です。今回は,奈良県の北椿尾です。ここは,以前,10年前?に鉱物探検に来たことのあるところです。その時は,初心者ばかりで何もわからず,雲母を少し拾って帰っただけでした。でも,その時のことで,記憶に残っていることが二つ。一つ目は,林道の横に,大きな穴があったということ。その穴には水がたまり,なんとも不気味なものでした。二つ目は,林道奥の日本オオカミ?じゃなく,番犬。あんな山奥に,番犬を飼ってまで守らなければならないものがあるのでしょうか。
奈良バスの窪ノ庄南で降り,現場までは4kmの歩きです。今日は,梅雨明け宣言があった翌日です。朝から,真夏の太陽がギラギラ照りつけています。腕時計の温度計を見ると36℃を表示しています。参加者は,約50名ほどですが,この暑さで体力に自信のない人は,スタッフの車で現地まで送ってくれるとのこと。4kmなら歩いてもいいかぁ,それに歩いていると珍しいものが見つかるかもねということで,歩くことにしました。
汗ビッショリになりながら,現地着。広い林道の終点です。そこからは,林道は狭くなっています。10年前は,この林道沿いにナゾの穴を発見したり,白雲母を発見したりしたのですが,今日は谷をはさんで南にある山の中腹に行くとこのことです。資料によると,廃坑道だとか。これは楽しみです。
奈良市の南東に位置するこの地域には角閃石斑レイ岩を伴って片麻状構造をもつ粗粒花崗岩が分布しています。この花崗岩は領家帯の古期花崗岩類に属し,年代測定では約一億年前の白亜紀中期のものとされています。この花崗岩中には斑レイ岩以外にもトーナル岩,細粒花崗岩,アプライト質花崗岩などが小岩体として存在し,今回訪れる北椿尾のペグマタイト質花崗岩も同様に領家帯を構成する一つの小岩体です。
ペグマタイトは巨晶花崗岩とも呼ばれ,滋賀県の田上山や岐阜県の苗木地方に見られる大きな晶洞に産する水晶や長石などが頭に浮かびますが,ここではそのような晶洞はほとんど見られません。しかし個々の鉱物は著しく粗粒であって,別名文象ペグマタイトと呼ばれる所以となる長石や石英が作る文象構造や,長さ数センチにも及ぶ白雲母の結晶など通常の花崗岩では見られない鉱物の形態が観察できます。
そのほかに,ペグマタイト鉱物として最大2cmといわれる柘榴石や亜鉛スピネル,希元素を含んだペグマタイト鉱物としてコルンブ石,モナズ石の産出も報告されています。(『地学研究』16巻5号 1965年)
やはり,白雲母
やはり,ここでは白雲母の結晶が有名なようです。説明によると,谷の向こうに大きな穴があって,そこに落ちている石を観察するのだそうです。10年前に,初心者集団でやってきて観察したポイントとはずいぶん違っています。さすが,プロだけのことはあります。しかし,もらった資料をよく読んでみると,10年前に我々が観察したポイントらしき所にも,P1,P2の表示があります。オオ〜ッ!オレらが前に行った所やん!と思って,解説を読むと…?。ナゾの穴のことや白雲母のことなんて書いていません。P1ではコルンブ石,P2ではモナズ石を見つけたとあります。コルンブ石…?モナズ石…?こりゃあ,わかるわけないよなぁ。それより,ナゾの穴や白雲母の方が素人受けするよなぁ。
とにかく,白雲母のキレイな結晶を目指し,そして,山の中腹の廃坑道の探検に出発です。が,いきなりの渋滞です。なにせ,50人ほどの人が小川を渡り,シングルトラックを進むのですから。初めからこんな調子で,いつになったら現地に着くのやら。と,道の脇にはハナイカダが実をつけています。夏のこの時期はもう実ですが,一度,花が咲いているところ見たいものです。
前方には,「奈良県100年記念…」という木柱がたっています。その脇には,「…害獣防除のためにワナを仕掛けてありますのでご注意ください」という表示もあります。そういえば,ここに来る時にも,畑の中に「作物をとるな」という立て札があったし,後ほど行った飯場跡にも「ワナがある。ケガをしてもしらん」というようなことを書いていたし,なんだかこの辺りは,よそ者にずいぶん迷惑をかけられているようです。それにしても,奈良県までワナを仕掛けることはないでしょう。
![]() |
![]() |
長珪石の鉱山
結局,廃坑道は5分ほどで着いてしまいました。いきなり,山の中腹めがけて,急斜面をよじ登っています。8畳ほどの広さなので,全員が登ることはできません。それらしき獲物?を持ち帰ってきたら,交代です。しばらくして,オイラも参加。登ってみると,広い坑道です。奥はどこまで続いているのかはわかりませんが,広さは8畳以上もありそうです。坑道に入ってみると,湿気はありますが,ひんやりとして気持ちがイイ。今までの汗がしだいにひいていきます。下を見ると,石が転がっていますが,どれも?です。入口の壁や天井の岩盤を見ると,雲母が筋のようになって現れています。喜んだ若者が,さっそくハンマーで叩き始めました。が,スタッフに止められました。岩が崩れるかもしれないからです。そりゃあ,そうでしょう。
しばらく,坑道をうろうろして,山道に下ることにしました。坑道を出ると,道が雲母でキラキラ光っています。なかなかキレイなものです。参加者は,一様にハンマーを振っています。坑道から持ち帰った石も,そこらに転がっている石も,谷に転がり落ちかけた石も,バラバラです。ふだんならここでオイラもハンマーを振るうところですが,写真を撮ることに大忙し。みなさんの割った石を見,キレイな結晶を写真におさめます。いわば,鉱物の写真収集です。写真なら,重くもないし,永久保存もできます。おまけに,人の採集したものでも,写真なら撮ってもOKです。こりゃあ,イイ。
![]() |
![]() |
山道を見ると,白雲母が草の間からキラキラ光っています。大きそうなのを手に取り,はがしてみると,これがきれいにはがれます。まるで,標本の白雲母のようです。こんな白雲母が,道のあちこちの落ちているんて,オドロキです。上の坑道から落ちてきたものなのでしょう。ところで,上の鉱山では,いったい何を採っていたのでしょう。資料によると,長珪石だそうです。スタッフによると,とった長珪石は釉薬の材料に使ったのでは,ということです。ということは,10年前にあったナゾの穴は,鉱山跡だったようです。そこに水がたまって,なんとなく,ナゾっぽくなったというわけです。もっとも,ナゾだったのは,我々初心者集団だけだったようですが。
![]() |
![]() |
今日の鉱物採集は,この坑道だけです。割った岩を調べると,柘榴石もありますが,肉眼では確認できないほどです。これでは,チョット…。結局,白雲母以外は「光り物」は見つからず。でも,はがすことができるほどのものなので,満足です。やっぱり,雲母ははがせなきゃあね。
このあとは,柳茶屋のバス停まで2kmの歩きです。歩きながら,林道の法面を調べると,コンクリートの切れたところから,たくさんの雲母を含んだ土が流れ出ています。谷の方を見ると,先ほどの坑道が見えます。ということは,この辺りに白雲母を含んだ層があるのでしょう。ということは,坑道があってもおかしくはありません。なるほど。
なお,この林道の入口には,清澄窯があります。10年前にはなかったように思うのですが,ここに窯元があるというのが象徴的です。まさか,坑道を掘って長珪石をとっているわけではないでしょうが。
今回は,山中での移動はなかったものの,キレイな光り物が見つかり,メデタシ,メデタシ。本当は,柘榴石や亜鉛スピネル,コルンブ石などが見つかればよかったのでしょうが,それはムリ,ムリ。梅雨明けの蒸し暑い中での採集でしたが,久しぶりの鉱物採集は楽しかったです。