山頂は冬支度 氷ノ山ハチ高原(2001.11.1)
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秋の平日は氷ノ山
平日のお休み。この時期のお休みには,氷ノ山しかありません。というのも,この時期の氷ノ山は,休日にはたくさんの人出が予想されるので,静かな山歩きというわけにはいきそうにありません。平日なら,ハイカーも少なく,静かな山歩きができそうです。ということで,今回は,いつもの坂ノ谷コースではなく,定番の福定から氷ノ山越えコースで登ることにしました。ただ,昼からは雨っぽいということなので,あまり長い距離を歩きたくはありません。
8時半に福定親水公園(P)着。秋の青空ではなく,どんよりと曇った空が頭上を覆っています。誰もいないだろうと思っていたのですが,年配のグループと女性グループが登山口にいます。平日でも,氷ノ山に登る人がこんなにいるんだ。ちょっとビックリ。
親水公園
準備を整え,早速出発です。親水公園を抜けると,多田ケルンがあります。『兵庫の山やま』の著者である多田繁次さんの追悼碑のようです。
多田ケルン
人生は旅である 芭蕉も 西行も
漂白の旅に果てた
この日本の 山を 川を 花を 鳥を
こよなく愛されて 80年
兵庫の里に 淡路の島に
丹波の山幸を 澄んだ瞳に映し
棚田の古道に咲く蒲公英に歓喜し
山懐にひっそりと花開くさゝ百合に
愛惜の涙を流す多田さん
その母なる山野に
熱いリターンコールを叫び続けて
山行を生き甲斐とされた
今 父祖の 森が 渓谷が
消滅しようとしている
自然保護にそゝぐ あなたの情熱と理念は
兵庫の山やまに 愛の賛歌を
声高らかに唄い上げようとしている
この今ある限り この情熱の燃える限り
径は長くとも 亦 険しくとも
あなたの遍歴は いつまでも続く事だろう
昭和61年3月21日 多田繁次友人達建立
キャンプ場を抜け,尾根を九十九折りに登ります。いきなりの急坂ですが,標高が上がるにしたがって,しだいに展望がよくなってきます。多田ケルンから5分ほどで布滝です。落差の大きい,見ごたえのある滝です。まわりの黄葉に映えています。
氷ノ山渓谷
氷ノ山に源を発する渓流は,自然そのままの姿で奇岩をぬい,いくつかの滝をつくり下流にそそいでいる。
その滝の一つ,布滝は高さが65mあり,白布をたらしたように岩肌をすべり落ち,その清楚な姿から「布滝」と名づけたといわれている。
春の新緑・夏の涼しさ・秋の紅葉・冬の静けさとその眺望は素晴らしく四季折々の自然美を満喫させる
関宮町
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再び九十九折りの路を登ると,今度は登山安全祈願のお地蔵さんが建っています。このあたりになると,まわりの木々も色づき,赤,黄,茶,そしてところどころに残る緑などのモザイク模様がきれいです。先発の女性2人組みをパス。軽装で,しかもショッピング袋を手に持っての登山のようです。あれで,山頂まで行けるの?と余計な心配をしてしまいます。
しばらく登ると,再び滝です。今度は,「不動ノ滝 くのじ滝」です。こちらは遠く離れているので,布滝ほどの迫力はありませんが,それでも次々に現れる見どころは,急坂での絶好のなごみポイントになっています。
再び,急坂を登ります。落ち葉が敷き詰まった山道は,気持ちのいいものです。しだいに道が緩やかになり,左手に杉林が現れると,地蔵堂です。加藤文太郎氏が泊まったといわれる地蔵堂ですが,今はトタン小屋の中にお地蔵さんが祭られています。
堂は四方一間半,境内地19坪で,福定,大久保の共有で,慶長9年,徳川幕府のおきてによって慶長11年に旅人の足を休めるために創建された。近年では,単独行の加藤文太郎が泊まったとして知られる。今は雪のために崩れている。(『大阪周辺の山200』)
地蔵堂からしばらく進むと,石柱(@)があります。「この位置は木地屋跡です 右に登れば氷ノ山越えです 左はとうろう岩から山頂」ウ〜ン,思案のしどころです。天気が天気だけに氷ノ山越えでピストンというのが無難でしょうが,とうろう岩から山頂,氷ノ山越えとミニ周回するのも悪くはありません。でも,登山地図を見ると,ルートがのっていません。ちょっとヤバイかもしんない。でも,同じコースを歩くのもイヤだし…。そういえば,氷ノ山越えルートの記録はよくありますが,とうろう岩から山頂へのルートの記録はありません。ここは,冒険も兼ねてとうろう岩ルートに行くことに決定!
とうろう岩へ
木地屋跡の小さな広場から谷に向かって下っていきます。谷に下る1mほどの段差には,クサリが設置されています。エエ〜ッ!いきなりのクサリって,とうろう岩ルートってかなり危険なルートかもね。ところが,クサリポイントを過ぎると,道はほぼ水平で,植林の中の道です。木には,赤ペンキで矢印が書かれています。これだけはっきりとしていれば,ルートは大丈夫でしょう。路面には,人が歩いた跡もあります。
静かな植林の中を歩き,右手のやせ尾根にとりつきます。今までの平坦な道から,いきなりの斜面です。上の木にはテープがあるので,とうろう岩へのルートに間違いはないでしょう。急斜面をよじ登ると,両側が切れ落ちた急なやせ尾根の尾根道です。道が急なだけに少し登っただけで,どんどん展望が広がってきます。振り返れば,黄色,茶色に黄葉した林が広がっています。
時々,鳥の鳴き声が聞こえるだけの静けさの中,足元に気をつけながら,1mほどの幅のやせ尾根を登ります。ところどころにある大岩が絶好の展望台です。氷ノ山から赤倉山への尾根から流れる斜面は,黄茶色です。10月中旬だと,赤色が混ざり,もっときれいだったことでしょう。チョット残念。
左右の展望を楽しみながら,どんどん標高が上がります。と,どこからともなく獣っぽい臭いが漂ってきました。ドキッ!まさか,熊?周りを見渡して,叫び声を上げます。こちらの存在を認めてもらって,逃げてもらわなければなりません。それからは,時々,叫び声を上げることに。ほかに登山者がいないので,誰にも迷惑にはならないでしょう。と,足元を見ると,黒いウンチの塊があります。まだ柔らかいようで,ハエもたかっています。アリャ〜!これはヤバイ〜!再び,叫び声を上げます。
あいかわらず,尾根は細く急ですが,踏み跡が明瞭で,とうろう岩へのルートであることに間違いはないでしょう。再び漂ってきた獣の臭いにビビリながら,急な尾根を登ります。しだいに周りをササが取り囲むようになり,ついにとうろう岩(A)へ。とうろう岩は2柱あります。とうろう岩は,小さな石がたくさん集まったような黒い礫岩のようです。石柱のある分岐点から40分です。
またもやヤブ漕ぎ
ここから山頂へは,尾根道を登るだけです。しばらく登ると踏み跡はなくなり,獣道のような跡がありますが,それもすぐに消滅。結局,ササをかき分けて,尾根に登ることにしました。幸い尾根はハッキリしていますが,踏み跡すらありません。ということは,この尾根を巻きながら,山頂への縦走路に出るのでしょうか。尾根から下って巻き道を探しますが,ありません。さて,どうしましょう。選択肢は,このまま尾根を登るか,引き返すかの2つです。上を見ると,山頂からの縦走路のある尾根が見えています。少し距離はありそうですが,尾根がハッキリしているので,登りさえすれば,縦走路に出ることができそうです。引き返すのは,シャクだし,下りで尾根を間違えることはよくあることです。決定です。山頂目指してGO!
尾根は細いササがビッシリと生えています。救いは,ササが細いのとそのすき間が多少あるということです。青ヶ丸のササヤブに比べると,ずいぶん楽です。尾根はあいかわらず,急ですが,ササをかき分けながら進むので,多少楽です。とはいえ,ヤブ漕ぎに違いはありません。ササの先が目に刺さりそうになる,頬を刺す,足に絡みつく,リュックに引っかかる。登りにくいことこの上なしです。ところどころにある立ち木に登って,進行方向の確認です。
しだいに尾根が広くなり,ササヤブから低木のヤブに変わりますが,すぐにササヤブになり,再び,ササヤブと格闘です。慎重に尾根の中心部を選びながら,ササヤブ漕ぎで登ります。頭上のササの間からは,日の光がこぼれてきます。空は晴れてきたようです。でも,周りはササだらけ。もうそろそろ稜線に近づいたんじゃないと思い木に登ると,氷ノ山の山頂避難小屋が目に飛び込んできました。縦走路はすぐそこです。やれやれ,これでササヤブとお別れです。しばらく,ササヤブ漕ぎをし,山頂直下の縦走路に飛び出しました。ササヤブを漕ぐこと1時間。どうにか,正規ルートに復帰です。
平日でも多い登山者
見慣れた氷ノ山山頂(B)は,尼工ヒュッテが撤去され,新しい展望台&WCができています。早速行ってみると,風の強いこと,強いこと。でも,新しいので気持ちがいいです。造りは,三の丸の展望台と同じ感じです。展望台から見ると,わかさ氷ノ山スキー場の最上部のゲレンデが少し見えています。三の丸への稜線は,いつものことながら,なだらかな稜線が見事です。
少し早いですが,ランチタイムにします。避難小屋に入ると,先客は中年ご夫婦が一組です。2週間前から来たかったが休みごとの雨で延び延びになり,今日やっと登ってこれたとのこと。しかし,紅葉が終わりなのでチョット残念。氷ノ山の紅葉は,10月が盛りのようです。ランチタイムの間に,7〜8人の中年グループが登ってきたり,会社の仲間らしきグループも登ってきたりで,天気がイマイチの平日にもかかわらずたくさんの人が氷ノ山山頂にやってきています。さすがは,人気スポットです。
さて,ランチを終え,これからどのコースで下りましょう。一番簡単なのは氷ノ山越えから下るコースです。でも,空を見ると,雲の切れ間から青空が見えたりしているので,そんなに急いで下山する必要はなさそうです。となると,定番の東尾根から下るというコースもありです。でも,東尾根は,10年以上も前ですが,登ったことがあります。山頂から見えるとハチ高原への尾根コースが魅惑的です。「ぶん回しコース」っていうのでしょうか。天気が心配ですが,展望のよさそうななだらかな稜線へGO!
今まで何回も氷ノ山には登ったことがありますが,定番の氷ノ山越えに行くのは今日が初めてです。黒土で滑りやすい丸太の階段道を下ります。ところどころに,水がわいていて,路面がドロドロです。とうろう岩への道があるかもしれないと思い,右手に注意しながら歩くものの,道らしいものはありません。結局,そのまま甑岩へ。ということは,とうろう岩と尾根はつながっていないのでしょうか。ナゾです。
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甑岩は,大きな黒い岩で,とうろう岩と同じ種類のようです。甑岩を過ぎると,道はしだいにゆるやかになり,落ち葉の敷きつまった気持ちのいい尾根道になります。両脇には,葉を落としたブナの木が点在しています。展望はところどころにあるだけですが,甑岩までの尾根道とは違った趣があり,楽しめます。
前方からにぎやかな子どもたちの声がしてきます。今ごろ?と思いながら進むと,20〜30人ほどの小学生の団体です。聞けば,昨日から鳥取県側のふもとの「氷太くん」に泊まって,野外活動をしているとのこと。今日は,氷ノ山山頂を目指すそうです。元気が声と明るい笑顔で,余裕たっぷりです。少し遅れて,10人ほどの小学生と引率の先生達のグループが上がってきました。こちらも,元気いっぱいです。昼から崩れるという天気が心配です。
しばらく静かな尾根歩きをすると,氷ノ山越え(C)です。ここには,避難小屋があり,道標もたくさんあります。お地蔵さんまであります。
舂米(若桜町) 大久保(関宮町) 自然探勝歩道キャンプ場(1.8km)舂米(4.8km) 氷ノ山登山道氷ノ山頂上(2.8km)
因幡国若桜から氷ノ山越えを経て 但馬国福定村を通り伊勢に至る
江戸時代には,この氷ノ山越えで因幡と但馬が結ばれていたようです。驚きです。それなら,積雪期はどうだったのでしょう。やはり,積雪期は誰も利用しなかったのでしょうか。山登りの装備のない江戸時代に,厳冬期の氷ノ山越えは死に等しかったことでしょう。それにしても,この氷ノ山越えが伊勢道とは,チョット無理があります。それなら,どこの道だって,伊勢へは行くことができるので,伊勢道になってしまいそうです。
ぶん回しコースへ
天気もまずまずなので,このままぶん回しコースでハチ高原まで行くことにします。急坂を登り,赤倉山の東を巻きます。右手には,遠くなった氷ノ山がシルエットになって見えています。その下には,とうろう岩のある尾根が流れています。とうろう岩らしきものも見えます。ここから見ると,尾根まではずいぶん長い距離です。しかもかなりの急勾配です。よくもまあ,あんな尾根をヤブ漕ぎで上がったものだと,今さらながら,自分のことながら,呆れてしまいます。
ぶん回しコースは,あまり一般的ではないようで,登山者に出会うことはありません。しかし,氷ノ山越えからの大きな谷を眺めながら歩くことができるこのコースは,東尾根コースよりもいいように思えます。ところどころに「ぶん回しコース」の道標がかかっており,急な坂にはロープが設置されています。よく整備された道で,静かな山歩きを楽しめます。氷ノ山の山頂から見ると,ササ原の中の道という感じでしたが,実際には,木立に囲まれた道です。氷ノ山越えからだと,withMTBでも大いに楽しめそうです。
布滝頭を越えると,急なアップダウンはなく,ブナに囲まれたなだらかな道を進みます。西側の展望ありますが,東側は,ササヤブの切れ目から氷ノ山のシルエットが望めるだけです。これがチョット残念。なだらかな道を下ると,大平頭避難小屋です。造りは,氷ノ山越えの避難小屋と同じです。あまり大きくはありませんが,宿泊は十分可能です。
大平頭避難小屋からは,急な下りになります。途中で,ホードー杉への道標があります。チョット寄り道。谷道を下りますが,頭上を見ると黒い雲が広がってきました。こりゃ〜,ヤバイ!慌てて引き返します。ホードー杉には未練が残りますが,天気が気になるので,今日のところはこれぐらいにしとったろか。
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リンドウの咲く山道
急坂を下ると,いきなりハチ高原が目の前に広がります。ススキ野原のなだらかな高原の向こうには,鉢伏山がそびえています。尾根の美方町側は,植林と雑木の混ざった林です。尾根をはさんで,見事な違いです。少し尾根を下る(D)と,ススキ野原の中にシングルトラックが下っています。黒雲にせかされながら,これを下ります。
MTBで快適に下れそうなSTです。道の両脇には,鮮やかな青色のリンドウの花が咲いています。珍しい!と思ったものの,結局はこのSTの両脇に点々とリンドウはありました。ススキ野原を向こうに見ながら,足元にはリンドウ。これまた気分のいい道です。高原ののびやかさと爽やかさを満喫できる道です。ササ原が植林に変わると,ふもとの大久保の集落はすぐです。
福定から氷ノ山越え,氷ノ山山頂,東尾根というスタンダードルートを,当初は考えていましたが,結局は,別ルートになってしまいました。でも,ぶん回しコースは快適でした。このコースがスタンダードになってもいいぐらいです。時間的にも,山頂から2時間あまりのコースです。ただ,とうろう岩からの登りのヤブ漕ぎは一般的ではないかもね。とうろう岩からの登りルートって,あったのでしょうか。ご存知の方は是非ご一報ください。